「 バイトをやらずにバンドやるには?と考えた結果として、自営業に行きついた」LOSTAGE五味氏|働きながら音楽活動をする・第5回 福岡編(2/3)

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2018年3月18日に開催された働きながら音楽活動をする・第5回福岡編は、ATATA奈部川氏とLOSTAGE五味氏の二名を招き、バンド活動と仕事の両立、活動のバックグラウンド、デビュー裏話などを伺いました。
イベント後半には、来場者からの質問タイムも設定。

本記事では、二人目のゲスト、LOSTAGE五味氏のトークレポートをお届けします。

メジャーデビュー、バイトしながらのバンド活動、メンバーチェンジなどを経験し、レーベルを立ち上げ、中古レコード屋もオープン。「バイトをやらずにバンドやるためにどうしたらいいか考えた結果、最終的に自営業だった」と語る五味氏は、どんなバックグラウンドを歩んできたのでしょうか。

 

※「働きながら音楽活動をする」企画についてはこちらから。

workxband.hatenablog.com


登壇者紹介

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五味岳久 (ごみ・たかひさ) LOSTAGE
1979年奈良県桜井市生まれ 。ロックバンドLOSTAGEベースとボーカル担当。地元奈良を拠点に2001年より精力的に活動中。 地域密着/地元発信のLABEL兼RECORD SHOP[THROAT RECORDS]主宰
LOSTAGE Webサイト
THROAT RECORDS Webサイト

バイトやらずにバンドやるには?と考えた結果として、自営業に行きついた

※以下、五味氏トーク書き起こし。注釈が無い限り、話し手は五味氏。

2001年に結成、今年で17年目。メンバーチェンジとかも何回もあったんですが、とぎれずずっとバンド活動続けてます。

バイトをしながらフルアルバムをリリース

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僕と弟がギターで二人だけなっちゃったんですけど、メジャーに行く前、2004年にUK.PROJECTって東京の大きめなインディーレーベルから「CD出さないか」って話があって。

まだ2000年代初頭というか前半って、ギリギリCDが今より売れてたというか。90年代のいい時代の残りカスみたいなものがあったので、そのとき僕は音楽で飯食っていこうと思ってたんですよ。

奈良という田舎にいて、東京のレーベルから声かかったと。インディーですけど、結構有名なバンドもだしてる。GOING STEADYとかLOST IN TIMEとか。これで音楽で飯食えるのかなと。

契約しましたけど、契約っていっても形態も色々あって、「ワンショット」っていう、アルバムごとに契約書書いてリリースする、みたいなことをやり始めました。

並行して契約はしたんですけど、上京はせずに地元で活動するような感じでした。あまり東京が好きじゃなかったので。

CDを出したけど、バイトもしてました。飲食店とかカレーとか出してる店でバイトしながら一枚目のフルアルバムを出しました。

メジャーデビューしても、バイトを続ける

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ツアーもやりながらフリーターもやってたんですけど、2007年メジャーデビューするんですよ。インディー(UK.PROJECT)で活動してるときも全国区でやってたんですけど、「このまま今の規模感でやっててもお前らは飯食っていかれへん」ってその時の担当マネージャーに言われて。

その人もすごい熱い人で、バンドが食べていけるように一緒に考えてくれて、メジャーに行ったほうがいいと言われて。

その人が、トイズ・ファクトリーっていう、Mr.Childrenとか出してるレーベルの担当者をライブに連れてきたんですよ。で、その担当者と話し詰めながら、その時もまだ音楽で飯食いたいと思ってたからトイズ・ファクトリーの契約書にサインするんですよね。それが2007年。

そのときも、バイトはまだやってた。漫画喫茶の受付やってた。そこがバイト経験は一番長くて、8年か9年とか働きながらメジャーデビューして。全国ツアーに行ったりしてましたが、バイトなんでシフトもある程度自由に休めるというか、理解のある会社で。

メジャーデビューした後にメンバーチェンジが2回くらいあるんですね。それは別に省きますけど、2回目のメンバーチェンジで2010年ですね。今のメンバー3人になって、しっかりやっていくかということで、バンドの名義を、「一旦、気持ち入れ替えるか」って変更しまして。
そのタイミングでメジャーとの契約が切れるんかな、メンバー脱退のタイミングで契約が終わって。

メジャーでバンドやってたときも、給料もらってて、一人、月7万とか。具体的ですけど。月7万でやってける人いないから、足りない分はバイトで補填しながら活動してました。

独立とレーベル「THROAT RECORDS」立ち上げ

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※THROAT RECORDS Webサイトより

契約終わって、2010年アボカドレコードっていう東芝EMIっていうメジャーなレコード会社の中にあるインディーレーベルでCD出させてもらうことになりました。

今でもよく聞くけど「メジャーの中にあるインディー風なレーベル」ってやつです。そのときは意味とかわかってなかったし、とりあえず出させてもらえるならどこでも良かったわけじゃないけど。

メンバーも入れ替わって、これからどうしようかってなってたから。アボカドレーベルからメンバー入れ替わってのアルバムを出しました。

そのレーベルすぐ無くなっちゃうんですけど、そのレーベルでやってるときに、「このまま俺はこんな感じでバンドやってて、バイトしながら生きていけないんじゃないか」と。気づくの遅いですけど、思い始めて。いろいろ計算し始めた。

CDが一枚2,000円で、権利とか著作権とかで、そのうちいくら自分の元に入ってくる。今やってるバンド活動で自分でできること、レコード会社のマネジメントに投げてた仕事を自分でやることで、少しはその分お金が自分の元に入ってくるんじゃないかと。少し搾取されてる感があったし。

一回いろいろ考えようと思って、アボカドレコードを離れて。独立するんですね、レーベルを立ち上げます。2011年。YouTubeのチャンネルをはじめに作るんですよ。

自分で自分のCDを出すためにレーベルを立ち上げます。そのときはレーベル会社が何かをわからないまま見切り発車で立ち上げてしまって。CDは自分で企画してレコーディングして。作ったんですけど、流通とか出版を別のところに業務委託してたんですね。それをやりながらフィジカルのCDの売り方とか、流通がなにかとかを勉強し始めます。

中古レコードショップをオープン

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※THROAT RECORDS Webサイトより

そのレーベル立ち上げてから、バンド、音楽活動以外の活動が増えるじゃないですか。それを売るための仕事、CDを作ったり、物販作ったり、ライブのブッキングしたり。物販の在庫とかその事務作業をするための場所が狭いし。

今まで自宅でやってたんですけど、子供生まれたりして家が手狭になってきて、事務所物件を探し始めるんですね。

2012年の10月ころ、近所の、友人がやってる服屋さんの隣の、もともと服飾の販売物件が空くので、そこを借ります。そこがレーベルの事務所物件になるんですけど、たまたま店舗型の路面の物件だったので、事務スペースを奥にあればいいし、ちょっと無駄に広かったんで、なにか売れないかと思いました。

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※THROAT RECORDS Webサイトより

で、今まで趣味で集めてたレコードとか物販を小売りをやろうと思って。古物の販売の資格というか、許可証がいるんです。それを取れば中古のレコード屋やれるなって思って、調べたら、前科がなければだれでも取れるって書いてあって。すぐその足で証明書発行してもらって、「THROAT RECORDS」ってもともとレーベルやったんですけど、中古レコードショップを地元の奈良にオープンします。

そこから6年やりながらFUJIROCK出たり、渋谷クラブクアトロでワンマンやったり。生活っていう自主企画でも大きめのフェスというか、フェスみたいなことをいろんな場所でやりながら、地元の奈良を拠点に活動をやっています。

バイトをやらずにバンドやるためにどうしたらいいか考えた結果、最終的に自営業だった

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※THROAT RECORDS Webサイトより

僕、一回も就職したことなくて、今も自営業なんですけど、僕がやりたかったことは、バンドに所属してメンバーと一緒につくる、ってことを中学校からやりたくて。それをやるためにバイトしたりとか。

アルバイトだけだと不安やったり稼ぎも少ないから、バイトをやらずにバンドやるためにどうしたらいいか考えた結果、最終的に自営業だったんで。気持ち的にはフリーターのまま来てる。

人前で「仕事と音楽とのバランスとは」と話していいか分からないけど、逃げに逃げ続けてきた結果、中古レコード屋をやりながら、バンドをやれてる感じです。なので、参考にならないかもしれないけど、なんか聞いてもらえたらと思います。

ちょっと特殊というか、普段あんまり仕事のこと考えてないんで、音楽ができればいいかなって。今でも、バンド忙しくなってきたらいつでも店辞めようと思ってて。

ほかのメンバー二人とも価値観同じで、バンドやるために時間の融通したり、音楽活動にプラスになることをやろうって。岩城はスタジオの店長やってて、弟は飲食店はじめて。バンドを軸にそれぞれ仕事やってる。バンドとしては特殊というか、人前で偉そうに言えることでもないんですけど。

ここで話したことが、バンドを続ける人の励みになれば

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僕、この企画、前から興味あって、登壇されてる方が、そもそもすごい仕事できる人でパワポを駆使しながら説明されてるの見てて、自分は無理だなというか負い目みたいなのを感じながら見てた。

僕みたいな感じフリーターの延長みたいなところでいまも音楽続けてる人もいる、ということで、だれかの励みになればというか、こんなかわいそうなやつもおるって私もがんばろうみたいな、そんな気持ちで見てもらえたらと思って話させてもらってます。

バンド活動を続ける続けないの話で、僕、結成してしんどくなったこと何度もあって。メンバーやめたりとか、契約切れたりとか。お金無くなったり事件もあったんですけど。

じゃあ辞めるかって僕から一回も言い出したことなくて。やりたいことをただやってるだけ。けっこう解散して辞めちゃう人もたまにいるんですけど、ちょっと休んだりして。バンド解散しても、まただれかとできるから。

就職とか仕事とか、暮らしとかあると思うんですけど、自分のペースでやる方法を探して問題があれば乗り越えていってほしいなと普段から思ってます。

僕の話聞いて、参考になったり、その人ががんばろうかなと思ってもらえるきっかけを作れたらって、いつも思っているんで。ライブでも店でもいつでも声かけてもらえたらと思います。

次回予告

次回のレポートでは、奈部川氏と五味氏、「働きながら音楽活動をする」主催の鈴木を交えたクロストークを中心にお届けします。(了)

※取材・写真:シゲルカズキ instagramTwitter
※編集・ライティング:佐野匠