【後半】バンドという、真っ白になれる瞬間を分かち合える仲間/2月26日トークイベント

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「働きながら音楽活動をする」第7回では、スペシャルゲストにmouse on the keys川﨑昭氏をお迎えし、バンドの立ち上げから、これまで歩んできた音楽活動の背景や、活動に対する想いや考えを伺いました。

本レポートでは、川﨑氏のトークライブ後半の様子をお伝えします。

※話し手
川﨑昭(mouse on the keys
武田信幸(LITE/行政書士

※モデレーター
鈴木 哲也 (oaqk/Penguin market records副代表/ヤフー株式会社)

※イベント
2019年2月26日 新代田FEVERにて開催

 リーダーとしての役割とメンバーへの感謝

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鈴木:そして40代はどうでしょう?

川﨑:いま45になりましたね。

30代に自分の作ったものが評価されて、その感覚ってすごく最高のものでよかったんですけど、そこから次に来るのは、「それを継続させなきゃいけない」という苦しみです。

5年前ぐらいまでのマウスでは自分がリーダーとして全部曲作ってきたし、みんなそれを練習してきてくれてやってきたんですけど、だんだん「メンバーも作らないとおかしくない?みんなでバンドじゃん?」ってなってきて。30代っていうのは、評価されたことを継続させる苦しみと、そのストレスをメンバーに当てる、というのがありました。今では、全員が作曲してますけど。

鈴木:nine days wonderのときはリーダーがいて、マウスではリーダーの立場になって、二つの立場を経験しているんですよね。

川﨑:nine days wonder以前、学生バンドでリーダーやってたんですけどね。リーダーの経験があったから、 「齋藤健介(※注 nine days wonderのリーダー)がやりたいことをサポートする人間は絶対必要だ」と思ってました。でも、リーダーとしてバンドの評価や動員数が増えるという経験はしてこなかった。mouse on the keysで、そういう風になってきたときに、リーダーの苦しみがわかって、 齋藤健介も相当大変だったんじゃないかなと分かりました。

他のメンバーからすると、お前は好きなことやれてていいじゃねーかと、思われるかもしれないですけど、リーダーほど大変なこと無いじゃないですか。今リーダーだから言ってる風ですけど(笑)

武田:大変ですよね。会社の社長とリーダーって重なるところがありますし、バンドって家族経営の会社みたいなコミュニティもありますし。

川﨑:若い頃は、音楽という目的さえ一致していればそれだけでいいって思ってた。20代のころは何となくそれで成り立っていたけど。mouse on the keysをやって海外に行ったり、バンド以外の音楽の仕事ももらえるようになって、色々な人との関係ができたときに、やっぱりこの関係性が自分を助けてるなと思ったんです。

僕は東京出身で、家業が潰れたり、家族が一瞬バラバラになったり。 近所付き合いもないし、核家族化が進んで、コミュニティが崩壊してて。東京は便利で1人でも生きていけるんですけど。振り返ると自分の故郷が無いということに気づいてきたんです。地元っていうのがない。

それで、40代になって、この2年ぐらいで、メンバーや関係のある人が、自分にとっての故郷であるという意識がすごい芽生えて来たんですよ。皆さんは多分、音楽は好きでやっていることだと思うんですよ。僕もそこから始まっていますし。

みんなそれぞれに帰る場所があると思うんですけど、バンド活動する方は、常に一緒にいるのは、親や彼女よりもバンドメンバーだったりしませんか。うちのメンバーは、彼女や奥さん以上にメンバーと海外行ってますからね。旅行じゃなくてツアーですけど。

武田:ツアー行ったら24時間一緒ですしね。

川﨑:ラインとかメールのやりとり含めたら、そうとう濃密ですよね。もちろん、うざいと思われてるかもしれない、メンバーにも。「フレーズ何年も変わってないけどさ、やる気あんの?」って言ってみたり(笑)

この関係で長く付き合ってきたメンバーって、ずっとやっていきたいという気持ちがあるから成り立っているし。この5年ぐらいで、ほんとみんなありがとう、って言えるようになった。

武田:リーダーとしてこうなりたい、と思ったきっかけはあるんですか?

川﨑:いろいろあるんですけどね。2011年の、ヨーロッパツアーの時に隠れ脳梗塞が見つかったのは影響していますね。明確な理由は分からないんですけど、多分、20〜30代の頃からライブで激しくヘッドバンキングしながら演奏して来たし、空気の薄いところでマスクしながら2時間ハツリをし続けたりとかもあるし、寝ないで曲作ったりもあるし、ストレスが原因かもしれない。

そういう、体を壊したのが2011年、12年ぐらいにありました。で、当時のマネージャーやメンバーに、バンド運営を任せたんですよ。「俺、体やばいし、言語障害出るかもしれないので」って。僕も仕事の振り方慣れていないので、なかなか難しくて。

で、自分でバンドの全てを管理することにしたら、やっぱりめちゃくちゃ大変でして。

例えば、請求書作成したり、ギャラを入金したり、webやSNSの更新したり、それを仕事の合間にやるんですけど、これが結構大変で。経理関係は以前清田(メンバーの清田敦)がやっていたんだけど、自分はその大変さを考えないで文句を言っていたんだなーと。

新留大介に至ってはこの前の北米ツアーに行くのに仕事を辞めたんですよ。帰った後のことを考えないで。もう40代ですよ?そこまで行動で示せるのは確かだし、そういうふうに取り組んでいたのを、自分はいままでリーダーとして見ていなかったんかもしれないと。一緒にバンドやってるんだから、同じモチベーションでいいもの作らないとダメだみたいに思って責めていたんですけど、目に見えないところで非常に時間を割いている。

で、そこがわかってくると色々と気づくんですよ。例えば、清田の指の動きの美しさとか。♪きれいな指してたんだね〜知らなかったよ〜♪って歌じゃないですけど、めちゃくちゃスムーズに動いてるじゃん!って。うちらの曲はかなり練習しないとできないというのは分かるし、彼は言葉でアピールする方じゃないですけど、表現、行動で熱意を示してた、ということに気づいた。ちょっと泣きそうになりましたよ、ホントに。

自分が、自己表現のためにmouse on the keys立ち上げて、評判になって、維持することが大変な時期もあったと言ったけど、そこに付いてきてくれているメンバーのことを考えると感謝しかない。

そこで自分がリーダーとしてメンバーにどういう風に返していけば良いかというと、やっぱり、自分も含め皆を幸せにしたいと思うことが一番だと思った。

それは、社長が社員を喜ばせるために「メシ食うぞ、焼き肉いこう」って奢ることに近いことかもしれない。胡散臭いと思っていたんですよ、前は。だけど、会社の定款に書いてあったりする「お客様の笑顔のために」っていうのは、あれはマジじゃないと書けないと思っていて。ああいうことを、本気で書ける人に人は付いてくるんだ、と思う。

だって、寝ないで練習している人間に対して「お前あのフレーズダメだろ」って一方的に言っているだけだったらみんな嫌になるし。知らないところで仕事休んで、すごいキツい中、曲作りをしているというところを誰かが労わないと絶対継続できない。

いわゆるメジャーアーティストじゃないから、潤沢な給料を払えないんだけど、メンバーに還元できるとしたら、色んな体験なり、楽しい経験で。ということで維持して来て、長くやってると、楽しいことも多いけど結構生活は苦しくはなってくる。

自分が好きなコミュニティを維持する

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川﨑:僕らがマウスを始めたころの状況からすると、相当良くなっていると思うんです。海外行ったりとか、テレビの仕事もらえたり。でも、インディペンデントなので現状キツくはある。

そこで、僕はバンドが故郷だしコミュニティだから、メンバーとのつながりをもっと感謝して続けられるようにしたい。

この前シングルを出す時も、イベンターさんや流通会社さんが関わってくださって、ある種アウトソーシング的な動きもできるようになってきた。それは、みんなの苦労をもうちょっと減らしたいし、笑顔を見たいと思ったので、そういう風に動けるようになった。これは各担当者さんからの愛情がないと成り立たないので、ここでも感謝。

僕は音楽やバンドに100%つぎ込んで来て、ラッキーなことにそこにコミュニティを見つけられたので、そこを維持していこうと最近は考えています。

皆さんも、多分今やっていることがお金に繋がるかどうか、ということもあると思うのですが、メンバーやスタッフとの繋がりやそのコミュニティがこれからの皆さんを助けるものだと思うんです。僕はそうだから。

もしバンドではなくてソロアーティストだったら、ライブハウスの方、エンジニアの方、スタッフの方って関りがあるわけだから、そういう関わりをコミュニティと考えれば、そこを維持するためにやっていくし、大事にすべきじゃないかな。

コミュニティを維持するためだったら、経理的なところとか、業務的なことを、「俺が今これやらないとほかのメンバーが苦労するだろうな」という風に考えるとできるようになる。

自分もメンバーも「助成金申請するのにこの資料が必要」だとか「領収証を全部取っておきましょう」ということも、みんなとの共同体を維持する気持ちがないとできない。

バンド自体、そんなに儲からない物だったりするけど、楽しいことがあるからみんな集まっている。

ある種封建的な家族性が壊れたことによって、趣味に没頭できる時代が来た。趣味に没頭していくと、損得勘定ではなく「好きなこと」で人とつながれる。僕はまだまだ至らないところもあるけど、コミュニティを「これからもやっていこうぜ!」と維持していきたい。そこをうまく回せるように、うまく活動できるようにしたい。LITEもやってるし、マウスもやっている。僕の周りのインデペンデントのバンドは、そういうノウハウ持っている。

掛け合わせることで、オリジナルになれる

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武田:そして、「真っ白」のところですね。

鈴木:この流れで行きたいのが、冒頭の「真っ白」の答え合わせと、それにつながるんですけど、「音楽一本で考えていた時もあった」ということ、「専門学校で教える仕事」というところもあるので、そこ三つ。

川﨑:端折るとですね、音楽はライフワークで好きなことだから、「教えるとか邪道だ」みたいに思ってたんだけど。でも自分は哲学とか建築とかアートとか好きだし、ロジックみたいなものが好きだった。

「自分の表現がどういうものになればいいか」というのを悩みながら考えていた20代があり。暗黒時代からmouse on the keysでどうやってバーンと開けたのかを伝えるのは、ある種哲学かなと思ったんで。その立場で生徒に教えようと思って、専門学校の講師やりませんかという声がかかったときに引き受けたわけです。

学校では、DTMとか音楽理論を教えたりとか、音楽史を教えてますけど、専門は自己プロデュースとか、自己肯定とか、そういったようなこと。自分で考える力をつけさせようというのが根本で。ビジネス書なんかを題材にしたりもしてたり。

例えば「かけ合わせる」という考え方を教えたりね。オリンピックの選手とか、ビートルズみたいなミュージシャンになれるのは、1/1000000の確率で。その為に、3年間でプロレベルの技術を習得するとなると、1日10時間を懸けなきゃならないと言われてて。今、皆さんの生活の中で10時間なんて時間とれないですよね。

そこで「掛け合わせる」という考え方。僕だったらドラム・アート・建築が好き、っていう要素があって、例えばポストハードコア界隈のドラマー100人の中で一番になる個性があるとか。例えばアートに関しては、詳しい人の中では1/100になれるし、建築に詳しい人の中でも1/100になれる。それを全部掛け合わせると1/100×1/100×1/100で1/1000000の人になれる。

要は、並行的に自分の興味あるものを突き詰めて、1/100の人になるようなレベルのものを掛け合わせてアウトプットすれば、1/1000000のビートルズを目指さなくていいんですよ。そういう掛け合わせができる人は、インターネットが普及したことで増えていると思う。

鈴木:これは自己プロデュース力とかですよね。

武田:つまりこれ、オリジナルになる、っていうことですね。

川﨑:この「掛け合わせる」というのは、自分の好きなものでいい。世の中的に流行っているとかじゃなくて。もう、好きで好きでしょうがない、オタッキーなものが三つそろって、それを掛け合わせる方法が分かれば最強。

鈴木:mouse on the keysとしての掛け算は?

川﨑:バンドとしては、nine days wonderで培ったポストハードコアのドラムスタイル、テクノ的な打ち込みのブロークンビーツとかの、ずれたような、トラックメイカーならではの発想のリズム、そして現代音楽的なピアノ。

ぼくが20代の時に読んでいたナポレオン・ヒルの『思考は現実化する』という本があるんですけど、それは大雑把に言うと、自分の願望を掘り下げて、予定を立てて、望んでいるものを達成するために、逆算して何をするかっていう考えなんですけど。

で、自分の願望を掘り下げるというのを音楽でもやってみたんです。自分は幼少のころから聴いて来たのが、坂本龍一さんだった。坂本さんとマンガ家の大友克洋が好きだったので、あの世界観でやりたい、と思った。小学校三年の時に『幻魔大戦』というアニメを見て、衝撃だったんですよ。エマーソンレイクアンドパーマーのキース・エマーソンのサントラ聴いて、子供ながらにシンセの不協和音がかっこいいなと。

そういった音楽のことを調べていたら、サティ、ドビュッシーラヴェルスティーヴ・ライヒワールドミュージック、あとジャーマンプログレニューウェーブも入ってくるというので、そこらへんを混ぜようという考えでmouse on the keysになってくる。nine days wonderや周辺のバンドが90年代のポストハードコアをある程度ひな形にして、自己流にしてく流れがあったので、僕はそこをさらに自己流で、その要素がありながらもアメリカ人がやっていないことをやろう、という思いもあった。

 

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そこでさらに参考にしたのが建築家の安藤忠雄さんの考え、というか美意識。建築好きだったのもあって「安藤忠雄建築から作曲のインスピレーションを受けた」って言ってたら、実際に安藤忠雄さんとお仕事させていただく機会を得て。

鈴木:それすごいっすよね

川﨑:本人にもお会いして、「光栄です」と。安藤さんに「音楽でメシ食えんの?」って言われましたけどね(笑)

巨匠・安藤忠雄はカウンターで世に出て来た方で。そのカウンターの人と我々が組んだ、って良いストーリーじゃないですか。しかも安藤さん、ほぼ親父ぐらいの世代で。ご一緒出来たというのは、けっこう快挙だと思ってるんですけどね

お陰で東京理科大学建築学科の広報誌のインタビューを受けたり、建築関係のお話をいただくようになった。なんで僕にこういう話を振ってくれるんですか?って聞いたら「音楽家が建築をどう見ているかを知りたい」って言われて。あー建築好きでよかった、って思いました。

 

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鈴木:掛け算ですよね。時間押してきちゃったのですが、ぜひ聞きたい「真っ白」「音楽一本」の話。今回のテーマにもすごく合うのでそこで締めますか。

川﨑:今まで、音楽中心でやりたいけど生活しなきゃいけないから仕事しながらやってきた。その後、音楽で自己実現した中で、「川﨑さんの感じでやってください」という依頼も増えた。

それでもやっぱり生活は安定しないので、日銭になるものも必要だと思って学校の講師をやって来た。最初は嫌厭していましたけど、やってみたら意外と自分に合ってた。

20代は1日中働いて一万円行かないようなアルバイトをやってたんだけど、専門学校とレッスンはけっこう稼げるし安定する。レッスンを何時間か受け持てば、余裕でアルバイトの倍以上の金額を稼げてしまう。ここで、時間の使い方や、自分にもこういうことができるんだと気づいた。

頭使いたくないならアルバイトをしていたほうが楽かもしれないけど、僕は自分の得意分野を伸ばしたかったし、言語化する事も好きだったので専門学校やレッスンの講師をやり始められて良かった。収入が増え、時間もできた。時間がいっぱいあるほうが新たなアイデアが浮かぶし、ぼーっとする時間も大事。僕は、多摩川に繋がる野川で、シラサギをじーっと見るのがライフワークの一つで(笑)

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川﨑:その時間がなくなると、僕はストレスが溜まって行く。皆さんもなるべく時間が作れるような生き方にシフトすることをおすすめします。ダウンシフトという、過剰労働・過剰消費を減らそうという考え方があって。一人でバーを経営している人が、儲かりすぎてくると、わざと休業したりして仕事量をコントロールする。そして寝る時間や妄想する時間を増やしたり、地方に行って畑を作る時間にあてたり。

僕の場合は、都会にいながらダウンシフトできたらいいなと。音楽とか知識の部分でお金を貰えるというのは、ある種、地方に行って畑を耕すことと苦労的には同じじゃないかなと思ってて。どこかに移住しようというのもアリだと思うんですけど、都会のほうが便利だし、すぐ近くに病院もある。生きる上で、資本主義システムを絶つというのではなくて、その良い部分を利用しながら、自分の為に時間をさけるようにすればいいと思ってる。

「真っ白」な状態

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川﨑:僕は音楽以外に絵も描いているんだけど。描くときに「バンドマンが画家としてデビューしてバカ売れ」みたいな事を想像しながら描いたことがあったんですが、ダウナーな気分になって全く描けなくなってしまった(笑)

で、そういう考え方を全部捨てて描いてみたら、1日100枚描けたんですね。昨年のアメリカツアーの時に、ビザ問題で10日間キャンセルになって時間ができて、そのときには5日間で600枚描けたんですよ!

で、気がついたら頭が真っ白になっていた。理屈をこねくり回したり、先を予想しながら線を引いたりすると、それによって倦怠状態が訪れ、やる気が失せ、全く描けなくなる。何も考えないって難しいですが、ただ線を引く事に集中すると、いくらでも描ける事がわかった(笑)

つまり、知らないうちに、損得勘定で描いていることに気づいてきた。それに気づくには、やっぱり時間がないとできない。線を引く事に集中する時間がないとわからない。瞑想や座禅が体験でしか理解できないのと同じで。音楽や描画にもそれに近いものがあるんじゃないか。

バンドがいいのは、ライブで真っ白な状態になれるからだと思う。この状態がやめられないからみんなでやる。みんなでやると、それぞれの生活があるから、スケジュール問題とか生活費問題が出てくるんだけど。

真っ白には、考えが二つあって、一人でやる真っ白と、大勢でやる真っ白がある。
大勢でやる真っ白が、まさに僕とってバンドなんだけど、それが「コミュニテイを維持する目的で真っ白になろうぜ」っていうこと。

で、一人でやる真っ白は、稼ぎとか関係なく、誰の為でもなく自己満足を徹底すること。僕にとってのドローイングがそれ。

作曲をしてきた身として、納期を守りながら大量に作曲するのに苦しんできたんで、「がんがんアウトプットするにはどうすればいいか」という問題があったわけです。

その一つの答えが、「真っ白」かもしれないと。真っ白って、線を引くとかだけじゃなくて、超うまいスイーツ食ったときのヤバさとか、かっこいい曲聞いた時に悩んでいることが一気に吹き飛ぶ感じとか、あるじゃないですか。既にみんなの体験の中にある。

 

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鈴木:アスリートだと「ゾーン」とかいいますよね。

川﨑:ゾーンとか、フロー状態と言いますね。心理学者チクセントミハイがフロー体験理論というのを唱えていて、フロー状態に入るのには8つの要素が必要だと。絵を600枚描けたときは、僕も8つの要素を踏んでた。

武田:僕も曲作ってるときに入っている気がします。

川﨑:そのフロー状態をどんだけ持続できるか。フロー状態持続して、没頭できる環境作ったら、年間約40,000枚は描ける。それだけ描いたら何か生まれますよね。本来の順番としては、実際それ以上描いてはじめて評価されると思う。たまに生徒に「どうやったらアーティストとして生活できますか?どうやったら売れるんですか?」って聞かれるんですけど。大して作ってないのにバズる事が先行している。

まずは没頭できる時間や環境を工夫して作ることが大事だと思う。

鈴木:バンドをやるという時間と、バイトで食っていくという時間が、いつの間にか逆転していて、食べるためにバイトの時間ばかりでバンドの練習ができない、という本末転倒のところがあるんですよ。それよりは、会社員として働いたり、川﨑さんの専門学校で教えるみたいな感じで時間を作れるようになることで、制作活動に時間を充てられるようになる、という。

川﨑:趣味としてやっていたことが、知らないうちに「作品を買ってほしい」とか「動員を増やしたい」とかになるじゃないですか。そうすると苦しみが始まる。自己満足の為にバンドをやっていたはずなのに、いつの間にか人の為になってて。。音楽やバンドは特に、リスナーやオーディエンスに向けて発信するモノなので、大なり小なり商売的なところがある。

僕も音楽を、mouse on the keysを、ライフワークだと思って来たんですが、今は仕事という認識でやってる。それは金の為というわけではなくて、メンバー、スタッフやファンを含めたこのコミュニティの維持の為の仕事というか。みんなで真っ白になる為に、新曲をコンスタントにリリースしたり、バンドに関わる雑務やツアーを組んだりするわけ。

鈴木:音楽一本というところで言うと、サポートをされていた時に得られるものと、自分の制作活動で得られるものとで「真っ白」の種類も違うというのもありますし。

川﨑:一応一通りやって来たわけだけど。音楽の仕事で一度に大きな額をもらうこともある。
そういうことを経験してきたうえで、結局大事なのは、どうあれ真っ白になる事だなと。シラサギ観察最高と(笑)

鈴木:時間がやってきてしまいましたので、今回のテーマを踏まえて、川﨑さんから会場の皆さんに一言。

川﨑:質問があったら言ってください。イベント終わった後もウロついていると思うんで。僕は、ドラムを叩くし、作曲するし、指導もするし、絵描くし、シラサギ見るし、ジャンルはよくわからない人間です。みなさんもぜひそういう、あいまいさで生きると楽しいんじゃないかと思います。

mouse on the keys川﨑氏のトーク後半ここまで。

 

川﨑氏のトーク前半は、こちらからご覧いただけます

workxband.hatenablog.com

川﨑氏とともに登壇した武田氏が過去のトークイベントで語った、「バンドを続けるという生き方」も合わせてご覧ください。

workxband.hatenablog.com