(3/3)仕事しながらバンド活動は決してダサくない。「働きながら行う音楽活動」を考えるトークイベント

バンドと仕事の素敵な関係

鳥居 大氏(ATATA/株式会社ウェブクルー デザイン戦略Div マネージャー )

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最終回は、ATATA/株式会社ウェブクルー デザイン戦略Div マネージャー の鳥居 大(とりい・だい)氏のトークをお伝えいたします。

「バンドがすべて」と思っていた20代前半。あるきっかけを経て「仕事も納得いくようにやりたい」と思い始めた20代後半。そして「バンドと仕事の素敵な関係」を築いた今。

鳥居氏が、どんな道を歩みながらバンドと仕事の両方を楽しめるようにしてきたかをお話いただきました。

(以下、鳥居氏のトーク内容書き起こし)

 

 

働きながらバンドできるの?への答え

今日のテーマについて答えを言ってしまうと、「できる」。ただそれだけじゃなくて、どういう風にやってきたとか、どういうスタンスでやってる、という事を話したいなと。

仕事しながらバンドをするのはダサくないし、意外と何とかなる。僕が伝えたいのはそれだけ。自分次第のところではあるんですけど、価値観として僕はそういう風に今は思えているし、やってきたので。

傍から見たら僕らがやってるバンドなんかゴルフみたいなもので、言ってしまえば趣味の領域というか。

でもやりたい。やめる理由もタイミングも、子供生まれるとか結婚するとか、それこそ僕らの歳になると親父がどうとか、婆ちゃんがどうとかって話もあって、いくらでも転がってる。だからこそバンドも仕事も、自分の人生も楽しめるようにやったほうがいいかな、という風に思ってます。

 

「バンドがすべて」だったころ

仕事しながらバンドするのってダサい。ちゃんとやれよ、バンドを一番に考えて。という風に思っていたのが若い頃。

すべてにおいてバンドが優先だと。恋人も、家族も、仕事も、友達も、お金も、全部二番目以下。練習のスケジュールはメンバー同士で絶対合わせるべきだし、曲覚えてこないとか、その先のアレンジを考えてこないとかお前何やってんだ、ということを思ってずっとイライラしていた。

その頃って、全部のアイデンティティはバンドにあって、それ以外の事はどうでもいいぐらいの感じで思ってたし。周りのバンドマンと話してても、「たぶん、こいつは売れねえけど俺は売れる」って本気で思ってた。これ見事に外れたんですけどね(笑)。

 

借金の取り立てに遭う

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※鳥居氏のスライドから抜粋

なんで「バンドしながら仕事するのダセーよ」という考えから今のようになったかというと、きっかけは「生活を投げ打つスタイルの限界」から。

21歳ぐらいの時には、年間約120本ライブしてて。お金が無いので、炊飯器もってツアーして、年収は56万、年収ですよ。単発で広島にライブしに行ったはいいけどお客さんたった10人、とかはき違えたストイックさもあった。

そんな生活をしていて、バンドも鳴かず飛ばずで、気づいたら借金は300万。毎月8万円返しても元金減らないみたいな。で、だんだん返せなくなって、リアルに「追い込み(借金の取り立て)」みたいのがあったんですよね。

その当時一人暮らしで、すりガラスの部屋に住んでいたんですけど、ピンポーンて鳴らして来て無視してたら、すりガラス越しに部屋の中を覗かれて。相手は部屋の中を見えてないんだろうけど、動いたらまずいと思って自分はテレビも消せず一歩も動けず固まってた状態で。怖かったですよ。

追い込まれるのは本当に嫌なんで、これはちゃんと働かないとまずいな、と思ったのがきっかけ。その後、25歳の頃に行政書士の先生に債務整理してもらって、時給のいいバイトしようと。

 

心境の変化

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時給のいいバイトってWeb系の何かかな?と思って、とりあえずECサイトWebデザイナーに応募した。

面接で「コーディングできる?」と聞かれたけどbrタグすら知らないし、「フォトショップ使える?」と聞かれて、使ったことあるけど2回ぐらいしか開いたことないし。 そんな感じだったんですけど、大体「できます!」とか答えてたら結局合格。

全然出来ない状態から始めても、なんとなくやっていれば人間出来るようになるんですね。で、出来るようになると、だんだん面白くなってくると。ここから徐々に心境がかわってきて、「Webデザインて面白いな」と思うようになってくる。

それまでの仕事しながらバンドするのってダサい、というところから、仕事も自分の納得のいくようにやって、「かっこいいと思えるようにしたいな」と思い始めたのが心境の変化としてありました。

 

ガンガンいこうぜ

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※鳥居氏のスライドから抜粋

28歳の時に初めて正社員として就職。

古くから伝わるハードコアスタイル「ガンガンいこうぜ」という感じで。とにかく出だしが遅かったので、ガムシャラにやらないと追いつかないなというのがなんとなくあって。そもそも僕、大学も行っていないので学歴コンプレックスもあったので、そういうのに負けないようにやろうかな、と決めてやりまくりました。

Webデザイナーとしてアルバイトで入って、その後違う会社で28歳の時に正社員になって、32歳で今の会社入って、新規事業の責任者になって、現在はデザイン部署の責任者。

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こういうふうに辿ってきて、次何やるかは分からないですけど、なぜこのように取り返せたか、なぜ年収56万円からちゃんと働けるようになったかというと、やっぱりバンドやっていたからこそ身についたことが多いなと思っていて。一つのことを本気でやったという事と、バンドという一つの組織を濃く経験したからかなと。

ボーカルって経営者で前に立って導いていく人、みたいなイメージで。メンバーみんな思っていることも違うし、やりたいことも違っている中で、集まって何か曲を作る作業っていうのは組織に近いなと思ったんですよね、会社に入ってから。

 

バンドだけではない仲

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※鳥居氏のスライドから抜粋

今は、バンドも仕事も両方大事。これ、象徴的なエピソードが一つあって。今日来てる小川の話なんですけど。

2016年1月、ライブがすでに決まっていたけど、ラスベガスでCESっていうイベントがあって、その仕事で出張の話がきたので、仕事優先したいのでライブ出なくていいですかというのをメンバーに言って。

ライブの発表はしてしまっていたのですが、「これを逃しちゃだめだな、チャンスだな」と思ったので 、悩みに悩んだけど正直に「CESに行きたい」ということを伝えたら、「じゃあ誰かに頼んでやればいいんじゃない?」ということをメンバーが言ってくれて。誰一人反対しなかった。

で、この後登壇する 小川保幸a.k.a全弦解放に頼んで、たぶん当日も全弦解放でやってたんだと思うんですけど、ライブをやってくれたと。

一緒にATATAというバンドやってるけど、バンドだけの仲じゃないというか。

メンバーが、自分の生活もちゃんと理解してくれて、みんなのことを尊重して出来ているような関係性であるのが、ATATAというバンドの良いところだなと思ってるし、そうじゃなかったら続けられないかもと思う。

 

バンドと仕事の素敵な関係

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昔はバンドに完全にアイデンティティがあって、「仕事は生きていくための手段」でしかなかったんですけど。

「バンドと仕事の素敵な関係」と僕が思っているのは、すごいここ(バンドと仕事)が近くなってきたな、と最近思っていて。いろいろな出会いもあれば、やり方の話もできるし、考え方の共有もできるし。実際に仕事につながることもあったし。

バンドはバンドでやりたいこともあって、仕事は仕事でやりたいこともあって、そこに夢を持てる、というように僕は最近感じてます。

今日見てる限り、あんまり若い人いないですけど、別に「すぐに就職してやれ」とか思わないし、逆に「若い頃は絶対就職するな」とも思わないし、どっちでもいいと思うし、どっちの選択肢もアリじゃないかなと。

若いうちに就職してバンドを続けるでもいいし。バンドをやりまくって30歳から就職でも全然遅くはない、というか何とかなると思うんで、それは僕が何とかなったので。

ちゃんと続けたいのであれば、昔とはバンドや音楽を取り巻く状況は変わっていると思うので、それぞれの環境で続けられる方法を見つけて欲しいなと思います。

結論、バンドやろうぜ、ってことです。(了)

 

※会場:Salon de Zuppa
※開催日:2017年5月25日

※主催・モデレーター:鈴木 哲也(oaqk/Penguin Market Records副代表/ ヤフー株式会社
※取材・撮影・レポート:佐野匠

 

 

第一回目:Endzweck 上杉 隆史氏のトーク

workxband.hatenablog.com

第二回目:DEEPSLAUTER 小川 保幸氏のトーク

workxband.hatenablog.com

 

 開催予定のイベント(2017年6月現在)

バンド活動をガンガンやりたい。でも将来のことも考えておきたい。バンドの優先順位を一番にしないとカッコ悪い?仕事もバンドもやっているけどツアーにも行きたい!

そんな、「仕事」と「バンド」の在り方についての悩みを持つ方は、ぜひチェックしてみてください!

7月12日開催:働きながら音楽活動をする 第2回 テーマ「働きながらバンドってできるの?/海外ツアー働きながらできるの?」

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